1937年に出版されたE.T. BellによるMen of mathematicsの日本語版。Amazon等の書評によると、翻訳がいまいちとのことだが、確かに部分的に読みにくい章があったのは事実である。ただこれは、翻訳者の癖や、翻訳年代が少し古いことによるのかもしれない。あと、扱っている数学分野に読み手が精通していないという可能性も・・・。
3巻で29章、合計で34名(ベルヌーイ家の人びとを一括りにしているので実際はもう少し多いが)の著名な数学者を扱っている。第1巻はニュートンをはじめ、解析学や数理物理学に関する内容が多いので、個人的には比較的すんなりと読めた。第2巻や第3巻は現代数学の主要分野である代数学や幾何学にも話が及ぶため、特に工学系の人間が読むには少し壁があるかもしれない。これらの基礎となる集合論・位相空間論を教えている工学系の学部は、(必要かどうかの議論はさておき)それほど多くないように思われる。
印象に残った章(数学者?)を挙げると、ややベタではあるが、
解析学の権化―オイラー、誇り高きピラミッド―ラグランジュ、数学界の王者―ガウス、偉大なアルゴリスト―ヤコービ、真率な魂―リーマン、最後の万能選手―ポアンカレ
あたりかなと。それにしても、最後のカントール(対角線論法等で有名)とクロネッカー(のデルタ等で有名)の対立の話を読むと、数学の世界でもやはり対人関係は避けて通れないということだろうか。
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