『古典力学の形成~ニュートンからラグランジュへ~(山本義隆著、日本評論社)』を読みました。本書は、Newtonの『プリンキピア』からLagrangeの『解析力学』にいたるまでの、力学理論の形成と発展の過程を歴史的に記述したものです。大学等で使う普通の教科書には、「Newton力学」が「Newtonの力学」とイコールのように書かれていますが、本書を読むと両者が異なることが理解できます。Newtonは当然ですが、いかにLeonhard EulerやJoseph-Louis Lagrangeが偉大であったかよくわかる一冊です。
また、普通の教科書では誤って説明されることの多いダランベールの原理(d'Alembert's principle)についても、詳しく述べられており参考になります。このあたり、『基礎物理学1 物理学序論としての力学(藤原邦男著、東京大学出版会)』にも、以下の記述があります。
「今日の力学の教科書の中には(11.31)(注:慣性力を移項した力のつり合い式のこと)のことをダランベールの原理と呼んでいるものが少なくない.だがすでにのべたように,動力学を静力学に帰着させるアイデアはラグランジュのものであって,ダランベールの寄与はあくまで,束縛力を考慮する必要がないことを指摘した点にある.したがって(11.31)に彼の名を冠するのは奇妙なことといわなければならない.」
確かに、慣性力を移項することで動力学を静力学に帰着させるのを同原理と呼ぶのは、Lagrangeにもd'Alembertにも失礼ですね。
ちなみに、古典的な名著である『物理学概説(小谷正雄編、裳華房)』や『一般力学(山内恭彦著、岩波書店)』でも、残念ながらダランベールの原理が誤って説明されています。
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